エルピス

フジテレビで放送されていた「エルピス」。Netflixで見てみました。

とても面白かった。製作はカンテレ(関西のテレビ局)。月曜10時枠は「アバランチ」とか社会派ドラマをやってて、とても面白いです。

エルピスは、構想からオンエアまで6年。プロデューサーの佐野さんは、この作品を企画したとき、まだTBSにいたそうです。企画は通らず、諸々なことがありTBSを辞めることになって、カンテレに転職。ようやくオンエアされたそうです。

そのゼロイチ実装力は、起業を目指すiU生にも参考になるのではないでしょうか。

プロデューサーの佐野さんだけでなく、脚本の渡辺あやさん、大根仁監督。ドラマ作った三人のキーパーソンのインタビューがたくさんネットに溢れています。

これがまた面白い。起業という視点だけなく、脚本家の渡辺あやさんの「発想力」や、大根監督の「グローバル競争」の話などなど。

まずは、脚本家渡辺あやさん。こんなことをインタビューで語ってます。

私たちはつい守ろうとするけれど、壊れた方がいいこともある。突破するとか壊すとかはすごく怖いことで、安全な時代を生きる私たちはそういうことに慣れていないけれど、壊れた先にもっといいものが生まれてくる可能性がある。それをドラマで体感してもらえたらいいなと思います。

東京にいたら、たぶん私は何も書けないだろうと思います。楽しいことがたくさんあって、情報を処理するだけで1日が終わるだろうなと。

ひとことでは言いにくいですが、コミュニティーにいろんな年齢層の人がいる。東京の人と話していると、同世代の人がたくさんいるので、問題意識を共有しやすい人たちと付き合っている感じがします。問題意識の持ち方が私とは違うなと思いますね。

島根の暮らしは、自分の生活の中におばあちゃんから子どもまでが常に登場して、私の年齢的な悩みとか自分の世代の悩みに意識があまりフォーカスされない。もっと全体で見る。そこに大きな違いがある気がします。

「エルピス」脚本家・渡辺あやさん 6年越しの脚本に込めた危機感と覚悟、東京では書けないこと、東京新聞、2022年11月7日

「守るのでなく、壊す」「東京でなく島根、お年寄りから子供まで」という世代も空間もごちゃまぜなコミュニティが発想力の源ではないか。。という話。納得です。

次、プロデューサー佐野亜裕美さんのお話。

自分の価値をちゃんと自分で見積もれてなかったんですよ。だから結局、他者からの評価っていうところに基準を置かざるを得なかった。20代ってやっぱりいろんなことを教えてもらう立場だから、それに対して自分が返せることってなんだろうみたいな思考になっちゃうんですけど、でも実は会社には、少なくとも今の終身雇用型の日本の企業においては、20代の社員に対して仕事を教える義務があるわけじゃないですか。だから教えてもらって当然って割り切れてればよかったんですけどね。

自分には価値があると信じることも大事で。自分の軸を作って、何かベースにあれば欲しいものが意外と限られてくるというか。だって「私は生きているだけで素晴らしい」みたいに。もちろん心からそう思えているわけじゃないけど、そう信じることが大事だし、それを補強するためにそういう信頼できる友人とかパートナーとか、そういう人がいるんだと思うんです。

ただ、そういう自分であっても組織と合わないこともいっぱいあるわけで、会社なんて山ほどあるし、今働き方もどんどん自由になっているから、嫌なら辞めたらいいと個人的には思っています。

「自分の価値を他人に委ねない」…『エルピス』佐野亜裕美Pが異動・転職を経てたどり着いた生き方と組織との付き合い方、FNNオンライン、宮司愛海、2023年3月7日

「自分には価値がある」とてもいい言葉だと思います。自分の評価は他者にしてもらうのでなく自分でする。自分を信じる。iU生もこういう生き方をしてほしいです。

大根仁監督のインタビューです。

だから最終的には、「VENICE 2」っていうシネマカメラの最高峰のものを使って、なおかつレンズもライカが開発している「Leitz」っていう超高級なレンズを使って撮ることになって。映画でも、ここまでやらないぞっていうぐらい、最高の機材でやることになったんです。だから、ちょっと普通のドラマと『エルピス』は、映像的にも違いますでしょ?

なんで日本のテレビドラマだけが、予算よりも安く見えるのかっていう問題は、結構ずっと思っていて。それは作り手側にも視聴者側にも多分問題がある。いわゆる配信ドラマで観るものと、地上波のテレビドラマで観るものを、無意識に分けていると思うんですよね。配信ドラマは腰を落ち着けてちゃんと観るもので、テレビドラマはリビングの明るい部屋で、みんなで観るものであるという固定観念みたいなものがあって。ただ、海外の配信ドラマのようなものを、特にコロナ禍以降、多くの人が観るようになった。なので、そういうものを民放のテレビドラマでも観たいと思っている視聴者は、絶対にいると思うんです。だけど、そこにチャレンジする人がなかなかいない。これだけ視聴メディアが多様化してきているのに、特に民放ドラマのプロデューサーには、ほとんどいないっていう。

『エルピス』大根仁監督ロングインタビュー 画期的な撮影から長澤まさみとの再タッグまで、Real Sound、2022年12月26日

ということで、コンテンツまわりの物語がとても面白いです。リンクを辿ってオリジナルインタビューを読んでみてください。